僕を突き動かすもの
では、そうまでしてなぜ僕はエベレストに向かうのか。ここでジョージ・マロリーが残した有名な言葉をご紹介します。
“Because it’s there”
「そこに山があるから」日本ではそう訳されてきました。
でも、本当はいろんな意味が込められている言葉です。それについての説明は次の機会に譲ることにして、この言葉を僕が訳すなら、こうです。
「そこにロマンがあるから」
エベレストに挑む理由はなんだ?と聞かれたら、僕だっていろんな「目的」を話すことができます。
エベレストに登ることが、仕事に活かせるかもしれない。自分の肩書きに箔がつくかもしれない。今とは違う成長した自分になれるかもしれない。そして、妻や子供たちに僕の背中を見せたい。
白状すればそんな想いだってあります。でも、そんなのはちっちゃなオマケにすぎません。
僕に一歩を踏み出す力をくれるのはやっぱり「ロマン」なんです。誰かのためでも、何かのためでもなく、心の底からワクワクするこの感情なんです。世界最高峰に挑む、この「ロマン」以上に挑戦心を沸き立たせてくれるものはありません。
きっとこのワクワクは何かにチャレンジをする人に共通するものではないでしょうか。もちろん、人によって当然ワクワクするツボは違うわけです。
でも、どんなチャレンジだって、「ロマン」から出発するべきじゃないか。ワクワクした気持ちがなければ、どこかで妥協が生まれてしまう。これは冒険だけの話ではありません。仕事もビジネスも同じだと思うのです。
今回エベレスト登頂を目指したことで、僕は人生への向き合い方ががらりと変わりました。
目の前の一人ひとりに対する向き合い方も変わりました。一つ一つの仕事も、一回一回のトレーニングも、前よりもっと大切にするようになりました。
見る景色、季節の移り変わり、一瞬一瞬を味わう。まさに禅の世界です。一回一回の食事もすごく味わって食べるようになりました。
その一つひとつのプロセスに生き様が現れてくるし、プロセスの一つひとつで己の生き様をつくっていく、そんなふうに感じています。
みなさん、たくさんの応援メッセージをありがとうございます。それでは行ってきます!ナマステ!