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世界17カ国のタレントリーダーが一堂に集結。リージョン主導でビジネスを構築する、真のリーダーシップが生まれた。(前編)

2022.10.12

世界17カ国のタレントリーダーが一堂に集結。リージョン主導でビジネスを構築する、真のリーダーシップが生まれた。(前編)

総合商社

グローバル企業における本社および各リージョン間の関係性は、経営効率に大きな影響を及ぼす。J社では依然、各リージョンの経営は本社からの駐在員が主導し、フィナンスも本社が管理するスタイルをとっていた。しかし、本来ビジネスの萌芽は現地で生まれるもの。近い将来、各リージョンリーダーがリーダーシップを取って積極的にビジネスを構築できるよう、彼らにオーナーシップを宿らせたい。シンガポールラウンドと東京ラウンド。世界17カ国のタレントリーダーが、一堂に集い、膝と膝を付き合わせた。

筏作りから始まったシンガポールラウンド。

多様な民族と文化が融合するシンガポールで、17カ国の次代を担うリーダーが終結した。グアテマラ、カタール、カザフスタン、フランス・・・最初のブリーフィングから各国のプライドがぶつかり合う。異なる言葉や文化、商習慣。ギスギスした挨拶もそこそこに一同はシンガポールの最北端までバスで移動。幅約1キロメートルのジョホール海峡の向こうにはマレーシアが見える。

最初のお題は「全員で筏を作ってマレーシアに渡ること」。設計も、資材調達も、組み立てもすべて自分たちでやる。廃材と紐だけでチーム全員が乗れる筏をこしらえた。6月のシンガポールは暑い。汗が滴り落ちる。やっとの思いで完成した筏を海に浮かばせる。オールを持って、いざ出発。ところが前に進まない。海流のせいか、構造上の問題か。次々と発生するトラブル。途中で壊れてしまったチームもある。けれど、たどたどしい英語で交わす文字通り「命懸け」のコミュニケーションは、次第にチームに一体感をもたらせた。最後は全員ヘトヘトになりながらも、心地良い達成感に包まれて、最初のセッションは終了した。

エンパサイズされた価値観。

その晩のディスカッション。改めて自社の経営理念を再読する。歴史に裏打ちされた言葉たち。何度も目にしたはずの「挑戦」や「正義」といった言葉の真意が、驚くほどにスーッと入ってくる。筏による冒険という原始的体験を共有したことで、経営理念に込められた本質的な価値観が、見事に全員にエンパサイズされた。本質的な意見交換から生まれた言葉は、やがて言霊となり、一人ひとりの心に染み込む。企業の経営理念と自らの生き方、人生観がシンクロしていく。全員の表情には未来に開かれたワクワクした高揚感が漂っていた。

シンガポール最終日。まるで家族のような関係性が生まれていた。次回は東京ラウンド。異なるリージョンがバーチャルチームとなって、まだ見ぬビジネスを本社に提言する。リージョナルでしか見えない景色、そして、そこからしか生まれ得ない付加価値が必ずある。本社主導からの脱却。その土壌となる個々人の圧倒的な当事者意識と、次世代リーダー同士の熱を帯びた強い関係性が、シンガポールの地で生まれた。

(続く)