中国企業
F社は、日本の自動車メーカーの専属パーツメーカーとして中国に複数の統括本部と数カ所に工場を構えており、社員数は数千名にのぼる。新董事長が着任した今年、更なる飛躍を求めて本格的に現地人材の育成に着手した。これまで中国市場に展開している企業のほとんどは、現地人材に対しては「教育と管理」に集約し、本質的な「育成」をなおざりにしてきた。F社のチャレンジが始まった。
なぜ現地人材を育成するのか。
これから2年間かけて、次期リーダーを育成していく。スタートプログラムが終了後は、すでに次のステージが用意されている。本格的なタレントマネジメントを現地人材へ展開していく。ようやくその口火を切られるのだ。ただ、ここにたどり着くまでには、相当な困難があった。「すぐ辞めてしまうかもしれない現地人材をなぜ育成するのか」「まだそのレベルにはない。まずはスキルからだろう。リーダー育成など早すぎる」。日本人駐在員は口を揃えて酷評した。しかし、「できるかどうか?ではない。中国ビジネスの将来を創造するために、どうできるかだ。」経営陣と本社の確固たる覚悟を引き出したことで、プロジェクトはスタートした。
将来を期待される24名を選抜。
プログラムのテーマは二つ。「現地人材にしか見えない価値を生み出すビジネスプラン」。そして、「そのビジネスプランを自覚と覚悟を持って実現する意志の醸成」。現地人材4000名の中から、将来を期待される24名が選抜された。ただでさえ帰属意識を持たせにくい海外拠点。しかも、異なる文化的背景を持つ中国人スタッフから真のコミットメントは生まれるのか。プログラムは、万里の長城での「軸」探求セッションからのスタート。プログラム終盤、彼らの目の色が変わっていく。長く管理職を担ってきた選抜人材から、もう一段高いレベルで圧倒的な当事者意識が生まれる。今と未来に対する責任を、自らの意志で宣言していく現地人材たち。自己の生き様と会社の成長が重なり合った時、彼らから力強い誓いが生まれた。