経営×脳科学

コミュニケーションの可能性を探る

Hiro:チャットから質問が来ています。ちょっと見てみましょうか。

八木:「脳同調が起こりやすい環境や状況、感情の種類などはありますか」って質問が来ています。

川島:脳同調っていうのを明らかにしたのが、僕らの世界では最初だったんですけど、まだ3〜4年前のことです。ようやくこれが世界的にも認めてくださるところになって、これから情報が貯まっていきます。我々が持っている唯一の知識が先ほども話しましたけど、皆で同じような動きをすることで脳同調が人工的に起こせるということです。もう1つ、実は違う漫才師さんたちの例で、観客とのやり取り、トゥーアンドフローのコミュニケーションを入れるとやっぱり同調が起こりやすいってことはログで取れていました。なので、もう1つのキーワードはやっぱりコミュニケーションなんだと思います。

Hiro:もう1つ、質問がきています。「今、対面でもマスクじゃないですか。マスクでの会話だと共感性はどうなんですか?」という質問ですけど、いかがでしょうか。

川島:これに関しては(共感は)ほぼ無理だろうと考えています。1つの大きな社会的な実証というのは、幼稚園保育園でコロナ後1〜2カ月で悲鳴があがりました。何が起こったかというと、保育士さんがマスクをしていると子どもが一切なつかないという現象が起こったんです。その悩みを僕らも聞いたんですが、できればフェイスシールドで顔が見えるようにしてほしいという話をしました。口元が見えたことによって子どもたちのなつきが始まったという大きな実証があって、今では保育士さんは顔を隠さないことを原則にしているところが増えました。

Hiro:なるほど。

川島:子どもの方がナイーブな症状が出ますが、我々大人にとってもやっぱり顔を隠されていると感情が読めませんからコミュニケーションが取りづらいですし、さらにウェブコミュニケーションだと、実は僕がモニター上の皆さんの顔を見ると、皆さんからは僕の視線がどっかに行っちゃうんですね。これって正常なコミュニケーションじゃあり得なくて、誰かと面していて視線を避けられたら、それって不快のサイン、ネガティブサインにしか感じないわけです。そういうふうに脳にインプットされていますから。さらに、画像と音声の間にずれが生じると、これは致命的です。我々の脳はミリ秒単位で情報を精緻に解析しています。意識には上らないですけど、本当にミリ秒単位で画像と音声とをモニターしていて、そのわずかなズレに違和感を感じます。そういう意味ではコミュニケーションにおいては、今のままじゃダメ、特にマスクなんぞしたらアウト、というふうに思います。

Hiro:すごいことを聞きましたね。

八木:科学で証明されていることを使わない奴は負けるんです。


E:はい、皆さんもいつカットインしようかと思っていたところだと思うので、ぜひ声をあげてみていただいていいですか?

(某大手飲料会社Hさん):今仕事の中で人材開発、それから組織開発というところを中心に動いています。今日のお話の中で一番気になったのが、ウェブでのコミュニケーションでは共感が生まれにくいというお話でした。コロナ収束後もテレワークの流れは残っていくと思います。そこで、先ほど川島先生が漫才の例でおっしゃったようなインタラクションの場面をふやしていくとか、映画やドラマで共感が生まれるようにストーリーの力を活用するとか、何かしらの仕掛けを加えることによってウェブでのコミュニケーションでも共感度を上げていくことができないかをお聞きしたいです。

Hiro:素晴らしい質問だと思います。先生、いかがですか?

川島:まず映画を観たときの共感ですが、これはある程度脳科学的にも実験が進んでいます。一言で言えば追体験ですね。自分自身の体験と映画の中のストーリーの体験を、パラレルに重ね合わせてそこで同じような体験がある人は共感しやすいといったことがわかっています。ただ、今回のテーマは、人と人がお互いの意思疎通の中で共感するときの技術論の話ですから、例えば私がヒガシさんの生い立ちをお聞きして、涙をぽろぽろと流しても、意思疎通に有効な共感は何も起こらない。生産性のある共感を作るためにどうするか、ということに関しては、まだ僕らも技術的にはわかりません。

Hiro:そうなんですね。

川島:ウェブコミュニケーションにおいての問題の1つは、視線の位置が大きくずれていることです。例えば、モニターのディスプレイの真ん中にカメラがあるだけでも随分違うと思います。早くそういうウェブコミュニケーション専用のモニターを誰か作ってくれないかなとは思いますし、先ほども言いましたけど、画像や音声のズレを脳はすごく意識しますので、5Gの次の6G、7G、10Gといった、ものすごい高速ネットワークを万人が同時に使える状態になったときには、もしかすると遠隔でもリアルなコミュニカティブな状況が作れるのではないかと思っています。ただ、残念ながら現状ではなかなか手立てがありません。ポストコロナにおいてもコストカットを理由に遠隔でできるところは遠隔でやるという方針は、結果的に会社を傾ける可能性が強いと思います。意識の高い会社の中には、コロナの後は遠隔を使わないことをすでに決心している会社もあります。そこらへんはぜひ注意されるといいんじゃないかと、すみません、上から目線で言ってしまいました。


Hiro:八木G、どうですか。

八木:ウェブのコミュニケーションでも伝わる人と伝わらない人いる。ウェブでも伝わる人がいるってことはやっぱり何かそこにヒントがあるんだろうとは思います。僕の体験から言うと、伝わっているなって思う時は、相手の頭の中をひっかきまわしているとき。こっちから投げているだけだと届かない。でも、その人の頭の中で何かを起こせたら、相手が勝手に考えてくれる。さっき先生がおっしゃったような、自分の追体験を思い出すようなこともそう。僕の場合は、できるだけ例え話を入れます。「サバンナ経営」というテーマで動物の話をしたり、スポーツの世界の話で例えたり。聞いた人が自分で考えることで、初めて自分事になる。大きな意味で、ストーリーを与えることによって、その人なりに受け止めて考えてくれる。コミュニケーションというのは、相手がわかってくれるだけの材料をどれだけ与えられるか、が鍵だと思うんです。

Hiro:なるほど。

八木:ただ、人間っていうのは体中からいろんな感情を吹き出しているので、画面だけ、声だけっていうのとは全然違う。いくらアバターが出てこようが、僕はフェイストゥフェイスに勝るものはないだろうと思う。もちろん仕事の中には一人でやった方が効率の上がることもあるんで、100%フェイストゥフェイスにする必要はないけど、かといって100%ウェブにするのは間違いだと思う。そういうことを安易に言っちゃっている会社さんって結構あるけど。

川島:もう1つ言わせていただくと、先ほどお見せしたように今の科学技術を使うと(どれくらい伝わったかが)測れるんです。学者だと論文にならない仕事はしないんですが、ビジネスシーンでこうした装置を使っていただいて、どう関わるとよいコミュニカティブな脳の状態になるのかについて、トライアンドエラーをしてもらって、知識を貯めていけば、方程式が見えてくるはずなんです。例えば社長さんが社員さんの前で演説する場面でも、伝わっているかどうかを測ることができるんです。そうした脳の計測データをフィードバックすることによって「あ、このタイミングでこうすればいいんだね」っていうことが見えてくる。こういうことをビジネスの現場でもやれる技術は整いましたってことはお伝えしたいと思います。

Hiro:ありがとうございます。Hさんどうですか。

Hさん:納得です。やっぱり見極めがすごく大事なのかなと思いました。例えば、病気の親を看ている人を地方から東京に呼ぶとなると、それだけで本人にとってハードルが高くなっちゃうんですよね。でも、どういうときにはリアルに集めなきゃいけないのか、その辺をしっかり見極めながらやっていきたいと思います。また、さっきの技術の使い方、ぜひ検討したいと思います。データは嘘つかないので、これはぜひ取り入れたいと思います。

Hiro:僕らも発展途上なんですけど、上手にそれができると、世界に通用しますからね。ありがとうございます。ほかの方、誰かいらっしゃいます?

(某大手御菓子会社Oさん):非常に参考になるお話ばかりで頷きながら聴いていました。弊社ではオンラインのコミュニケーションを今は音声のみで行っているところが多いんですけども、これによる影響度合いがどれぐらいのものなのか、数値などでお教えていただけるとありがたいと思いました。

川島:残念ながら数値はありません。何%減ったといったような計量値はないですし、そこを測る手法もなかなか難しい。ただ、コミュニカティブな情報っていうのは、人間は視覚の生き物ですから、声よりも顔の表情をたくさん使っているんです。なので、音声だけのコミュニケーションはかなり限界があるだろうなと思います。

(某大手御菓子会社Oさん):やはりそうなんですね。

Hiro:八木さんなんかありますか。

八木:全くその通り。だって皆さんバーチャルで結婚したりしないでしょ?だいたい遠距離恋愛って壊れるでしょ(笑)。そういうもんなんですよ、やっぱり臨場感なんですよ、ホモサピエンスが出てきてから20万年もたって、ずっとそういうふうにしてきたのに、それを遮断したらなにか変なことが起きるというのは、感覚的にわかるよね。

Hiro:今IWNCとNeUでは、これまで見えなかった人材育成、経営者育成をもっとアカデミックに、脳科学を取り入れて侃侃諤諤(カンカンガクガク)しながら、進めています。今は、経営者として共感されるとか、耐性をもって次に進む力、こんな状況でも勇気をもって進む力を当然のように求められている時代です。もっともっとお互いに議論を尽くしながら形にしていければ、必ず人材育成が次のステージに行くと思っています。

今日はありがとうございました。

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