経営×脳科学

脳科学でストレスと向き合う方法

Hiro:ストレスについても話をお聞きしたいです。ストレスコーピングの話ですが、良いストレスからのストレッチ、この分野について少し話を伺いたい。八木Gが考えてらっしゃる良いストレスっていうのはどんなこと?

八木:自分の人生においてこれをやりたい、でも、成し遂げるためにはものすごい努力が必要なる、といった場合ってストレスを感じますよね。確かに大変な思いはするんだけれど、でもこれ、僕は良いストレスじゃないかと思うんです。一方で、このボス嫌いだよとか、会社に行ったらハラスメント的なことやられるとか、自分でコントロールができなくて、尚且つ自分に対して悪いインパクトを及ぼすようなものって、悪いストレスだと思うんです。リーダーはチームに良いストレスの状態をたくさん作ってあげるってのがいいと思うんだけど、そこにもやっぱり脳の受け止め方とかがあるんじゃないかなって思いますが、どうですか。

Hiro:良いストレスにおけるストレッチっていうのは、たぶん成長というキーワードにつながると思うんですが、先生その辺りいかがですかね。

川島:医学的にいうストレスというのは実は1種類しかありません。良い悪いはないんです。生体に外界から送る力をストレスって表現します。ですから精神的なストレスであろうと、肉体的なものであろうと、自分の外側から自分に向かってくるものすべてをストレスと言います。そしてそのストレスに対応する力。これをストレス耐性という言葉で表しますが、これは個人によって随分違います。

Hiro:そうなんですね。

川島:ストレスは人の意思とは関係なく、直線的に人間の前に表れてくる。それに対する人が、ストレス耐性の閾値を超えるとパフォーマンスが下がってしまうという曲線を描きます。ストレスの強さとパフォーマンスの関係では、ストレスがあると一旦は徐々にパフォーマンスが上がっていくので、この段階ではいい刺激、良いストレスってなります。それがある変曲点からストレスの強さに応じて下がっていく曲線を描く。これも心理学的にはわかっています。実はその変曲点の位置っていうのは瞑想を含めてストレスコーピングのトレーニングでずらせるんです。これは我々の研究成果です。例えば瞑想などをしていくと嫌な上司がいて毎日同じようなストレスがあっても、その働きかけの力というのが、今までは変曲点の外にあるので心が折れていたのだけれど、自分自身で変曲点をその先に持っていくことができると、上司の嫌な言葉が逆に力に代わる。こいつを見返すために俺はもっと頑張るぞというふうに、ポジティブ思考に変われる。そういったような反応が出ます。

Hiro:すごい。

川島:なので、良いストレスと悪いストレスが存在するのでなくて、同じストレスがあるんだけど受け取る側のキャパによってそのストレスの強さが良いストレスになるときと悪いストレスになるときがある、と考えてもらうと、より今の医学的な考え方に近くなります。もともと人は結構弱いところにストレスの変曲点がありますから、欧米の企業なんかが集中瞑想を社内でできるような部屋まで作っているのは結構有名な話でして、社員の方が瞑想をすることによって、ストレス耐性をあげることを実際に経験則で取り入れているんじゃないかと思います。

八木:自分自身の体験の中では、ちょっとしたアドバイス、ちょっとした言葉でそれまでストレスと感じていたことが、よし頑張ってみようって思うことがありますよね。瞑想しているわけでも何でもないんだけど、ちょっと頭を切り替えるだけで、ストレスが変わるっていうことがあるんだけど、それは今の先生のお話の中でどういう位置づけになってくるんですか。

川島:たぶん、そのストレスのベクトルの向きがやっぱり変わるんです。まさにストレスコーピングと呼ばれている指示になるんですけど、そのストレスが自分の方にまっすぐ向かってきているものをずらすような指示が上手く入ったときは、影響が少なくなるという感覚が起こります。ストレスコーピングの方法ってすごく多彩で、今おっしゃったように指示を出すっていうのも方法ですし、私が提唱したいのはストレス自体に強い人間になるという方向のやり方です。

八木:なるほど。すごくよくわかります。やっぱりいろんな方法っていうのを我々がもっと知るべきだよね。科学的に証明されているいろんな方法、それを一人ひとりの個性に合わせて、うまく適応する。それがこれからのボス、リーダー、人事の人たちの役割のような気がするね。

Hiro:方向を変える手法もあるし、耐性を強くするっていう方法もある。この両輪を持つっていうことは、これからの経営者にもはや必須な感じがしますね。

川島:ベクトルの方向を変えるというのは、相手とのコミュニケーションの中で起こることなので、AさんにうまくいったものがBさんにはうまくいかないってことが当然起こります。これは皆さんが日々経験していることでしょう。密なコミュニケーションを描けている場合には、その人に応じてベクトルを変えるという努力を、熱量をたくさんつかってやることができますけども、ストレス耐性をあげるっていうことに関しては、個々の器を変えるという技術論です。同じ上司の小言もマイナスに感じなくなる自分を作るってことが可能なので、両輪併せてやっていくと面白いと思います。

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