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現在の戦略の延長線上で、実効性を高める①


流通業A社
サービスの前線で、顧客志向に程遠い硬直した組織運営からの挑戦
「自社サービスのや製品が顧客離れを起こしていたら、そのサービスや製品を生み出した組織自体を根本的に考え、働きながら変えていかなくてはならない」


■縦割り意識で運営される売り場
顧客離れが続く業界において、A社も例外ではなく、売上は下降傾向にあった。一時的には統合・合併の効果で、 コストは下がったものの、要である顧客の支持は依然低下したまま、本社は営業改革を推進し、現場にもその戦略に 基づく、組織能力を求めていた。
A社も含まれるこの業界では、伝統的に売り場ごとに部署があり、そのために各売り場が、顧客サービスも組織 マネジメントもまるで独立した会社のような状態で存在していた。
確かに、かつては、それで良かったのかも知れない。
しかし、市場が成熟した今、売り場がバラバラに存在するのではなく、市場のトレンドを一緒に考えて、当然ながら、 これまで以上に情報交換し、アイデアを出す必要もあり、さらに直近の課題として、売り場において、縦割り意識から、 人の応援部隊の貸し借りが滞ったり、隣の売り場のことに全く関心がなかったり、別々の企画(催事)を検討したり、 といった顧客サービスの最前線らしからぬ実態が目立つようになっていた。これではとても、顧客の支持を取り戻す 売り場づくりなど、到底難しい状態だった。
本社は、今後多様化し、ニーズが高速化する顧客に満足してもらうためには、本社や企画部門の指示を待つのではなく、 売り場での部署を超えた接客を前提として、自分たちで顧客の潜在ニーズや空気感を察知し、売り場を企画、運営する という能力を身につけて欲しいというのが必達目標であった。


■負の学習をしてしまった組織
私たちが仕事の依頼を受け、インタビューしてわかったことは、売り場で起きていることは表層の出来事で、 多くの他社事例と同様に課題はもっと深いところにあった。

  • (組織としての状態課題)
  • 定期的に行われる部門を越えたプロジェクトは、各部門の思惑(損得)がからみ、自部門のメリットのみを主張したり、手間を考えて非協力的になったりと、頓挫が続いていた
  • トップダウンで効率化を今まで進めてきたため、ほとんど意思決定は部門長の承認が必要で、現場で解決できる小さな改善も、部門長の決済が必要な状態だった
  • 部門長同士がチームとして機能しておらず、上や親会社意思決定を仰ぐ伝達機能に個々が徹している。部門長が、店の経営を担う機関として機能していなかった
  • その状態で、仕組みや組織面での改革を導入したが、思惑通りに効果的な動きは見られなかった
  • そもそも、スタッフレベルでは、戦略について、理解、腹落ちしているものが少なく、何をどう変えたらいいのかわからず、結局今までどおりの仕事の仕方を貫いていた

 
つまり、これまでの戦略の落とし込み、それに基づく働き方・仕組み(損得、マネジメント)、意識のすべてが縦割り意識を 作り出していたのである。
当然、店の上層部からも、こうした傾向は見られ、当初予定していた現場中心のプロジェクトではなく、店の上層部も巻き込んだ プロジェクトにせざるをえなかった。


■プロジェクトスタート
目標とする売り場を以下のように決めた。
 ・ちょっと協力すれば解決できる店の課題を解決したい
 ・部門の枠を超えて「みんなで働く」の理解を浸透させたい
 ・部門を越えた行動を通して、戦略の意味することを理解してほしい
 ・部門長に経営陣としての意識を持ち、変革の主体者になってほしい
私たちはこの目標に向かって、店のミドルと呼ばれる30名を対象として、半年のワークアウト方式の組織開発をスタートさせた。
テーマは売り場の運営上の身近な課題を幾つかピックアップし、必ず部門の枠を超えないと解決できないテーマを設定し、 店の上層部はプロジェクトオーナーとして参加させた。


■プロジェクトで起きたこと
紆余曲折があった。これまで何度かこうした取り組みをして、結局、創り上げた提案に蓋をされてきたという経験を持つメンバー同士で、「力半分でやらないか?」という会話が、プロジェクトの裏で起きたこともあった。
店の上層部になかなか変化を受け入れないメンバーがいたこと。
私たちと本社とのプロジェクトの進行速度についての意見相違。
しかし、それでも、現場のミドルたちは、しだいにプロジェクトに熱を帯びていった。
そして、ある日こんな出来事が起こる。
ある大人しいプロジェクトメンバーが、「このお店はなくなってもらいたくない、自分が好きだから」という言葉を発したことを 象徴として、プロジェクト全体の空気が変わっていた。

その後、新しい「簡易利益」という概念を持ち込んだメンバーもいて、一気にプロジェクトは加速していった。
本社は、今後多様化し、ニーズが高速化する顧客に満足してもらうためには、本社や企画部門の指示を待つのではなく、 売り場での部署を超えた接客は前提として、自分たちで顧客の潜在ニーズや空気感を察知し、売り場を企画、運営する という能力を身につけて欲しいというのが必達目標であった。
 ・やらされ感の残る経営陣に自分たちが主役だというオーナーシップが芽生える
 ・部門を越えてアイデアを出し合うことの有効性を学び、そのために必要な個人の姿勢やチームの ルールを作った
 ・「本気」の連鎖が起こり、自分たちで殻を破る
 ・一方通行だった組織運営が、上と下で対話型の運営への変化がみられた


■成果は何だったのか?
成果としては、以下のように整理できる。しかし、本当の成果は顧客のために自分たちが何をしなくては いけないかを知り、実際に同僚、上司と知恵を出し合い、解決策を練り、実行しているということではないだろうか。これからA社を含む業界はますます、生き残りをかけて、経営・現場改革 が進むはずである。強い顧客志向の現場を持つことは競争力そのもとなるはずである。
 
(1) 生産性向上・業務改善
 店内における組織課題横断の解決に対する取り組みスタート
 店内課題解決手引の活用(IWNC作成)
(2) 組織能力開発・目的共有により、部門間協力が推進
 ex. 催事開催における営業部と人事部の対立解消。
   「簡易利益」という共通指標の導入。
   複数部門にまたがる、人の相互支援・全体最適活動。